ハラスメント
介護施設のクレーマー対策:本人でなく家族がクレーマーになってやってくる
弁護士:島田 直行 投稿日:2019.10.11
事務所では、介護施設からの相談がいろいろあります。介護事業所は、高齢者を対象にするので転倒事故などが起きてしまいがちです。そうでなくても利用者の予想外の行動などでトラブルが起きてしまうことが少なくありません。つまり本質的にトラブルが起きやすい業種ということです。
トラブルが起きやすいとなると悪質なクレーマーに出会うこともどうしても増えてしまいます。施設としては、「どう対応したらいいのかわからない」ということで事務所に相談に来られることになります。
介護事業所におけるクレーマーの特徴としては、本人ではなく事情を知らない家族が感情的に施設を糾弾してくることがあります。本来であればクレームというのは、その被害にあった人が述べるべきものです。いわゆる損害賠償にしても被害者が加害者に主張するものです。いくら被害者の親族だからといって当然に本人に代わって請求できるものではありません。ですから本来であれば被害にあったとされる利用者の方がクレームなどを述べるべきです。ですが実際の場面では、利用者の意思とは関係なく家族が一方的にオモテにでてきて施設の責任を糾弾することが珍しくありません。なかには利用者としてはとくに意見がないにもかかわらず利用者を差し置いて不満や責任を家族が述べてくるケースすらあります。
あくまで個人的な意見ですが、こういう場合にはこれまで施設とあまり関わりを持っていない家族の方が感情的になり自分の要求に固執する傾向が強い印象があります。介護というのは、施設と家族の協力関係のうえに成立するものです。「施設に入所させて費用を支払っているのからあとは無関係」というわけにはいきません。日頃から施設と交流があって信頼関係があるような方についてはあまりクレーマーの問題にはなりません。もちろんこういうケースでも転倒事故なので対立関係になるときもあります。ですが仮に対立関係になったとしても交渉あるいは裁判を通じて話を進めていくことができます。ルールに従うためには、やはり相互の信頼というものが必要なのでしょう。
これに対して問題となるのは普段は介護に関わっていない家族などです。こういう家族に限って何かトラブルがあると事実関係も曖昧なまま施設を激しく糾弾することがあります。何か反論すれば「施設は利用者をなんだと思っているのか。責任から逃げるのか」など声を荒げる人すらいます。事実関係もはっきりしない段階で一方的に施設の責任を決めつけること自体が問題という意識がないのでしょう。
介護施設の多くは、人手不足のなかで利用者のために一生懸命です。それにも関わらず根拠なく非難されれば誰しもモチベーションが減退して担当者の退職という事態になりかねません。それはさらなる人手不足を招くことになります。
家族から根拠なく批判される場合には、なかなか当事者の話し合いで解決することは難しいです。「あなたは請求権者ではない」と冷静に説明しても問題のある家族に限って「なんてことをいうのだ。家族だ」と根拠のない反論をしてくるものです。こういうときには弁護士に依頼して交渉をしてもらうことが有効な手法のひとつです。僕の経験からしても弁護士名で書面をだすだけで冷静になるケースが少なくありません。
「弁護士に依頼したらかえって火に油を注ぐことにならないか」と不安に感じられるかもしれませんが大きな誤解です。弁護士がついて法律論の持ち込むからこそ冷静な話し合いになっていきます。感情をぶつけられてひたすら耐えるだけでは問題の解決にはならず課題の要求がつのるばかりです。例えばクレーマーは、施設を激しく糾弾しながら退所や施設の変更を求めてきません。施設は施設と利用して不満だけ述べてくるようになります。こうなると施設側としても腫れ物に触るように仕事をしなければならなくなりスタッフ全員が疲弊します。
不当な要求には弁護士をつけてでもしっかり断る。あたりまえのことをつらぬことが他の利用者やスタッフを守ることにもなります。
詳細については、僕の本に書いていますのでご覧ください。
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