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ハラスメント

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部下からの逆パワハラ。耐えれば問題は解決するわけではない

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2020.06.30

令和2年6月1日からいわゆるパワハラ防止法が施行された。この法律は企業に対してパワハラの防止を義務づけるものとなっている。パワハラ防止への意識の高まりのなかで逆パワハラに関する記事も増えてきた。

パワハラは部下からもある…中間管理職を悩ます“パワハラ冤罪”が増加中

パワハラというと職位の上のものが人事権などを背景に部下に対して行うというイメージが強いかもしれない。だがパワハラの定義からすれば職位の上下は絶対的なものではない。部下からの不当な扱いや発言にしてもパワハラとしての認定を受けることがある。例えば次のようなものが部下からのパワハラとして指摘される可能性があるだろう。

  • PCスキルなどを意図的に上司に教えない
  • 上司に対して人格否定的な発言をする
  • 上司に対する根拠なき批判を吹聴する
  • 上司からの指示に対して理由なく反発し業務に支障をともなわせる

一見すれば「どれもさもありなん」という感じのものであろう。このところ若手のなかには、「管理職にはなりたくない」「出世したくない」と平然と口にする人もいる。これまで会社人生を歩んできた人には、「なぜ上を目指さないのか」と理解できないのみならず自分の能力を活用しない姿勢に苛立ちすら覚える人も少なくない。とくに経営者からは「どういう姿勢で出社しているのか」とも言いたくなるだろう。人生の価値観が大きく変わりつつあるということを受け入れなければならない。やはり価値観の変化による上昇志向の減退というのはあるだろう。

もっとも個人的にはこういった価値観の変化による上昇志向の減退は一般的に言われるほど広がっているとは思っていない。今でも目にする若い人は「がんばろう」という意識を持っている。それでもしだいに管理職になるのを避けるのは、やはり目の前のいる自分の上司に魅力を感じないからであろう。上からは営業成績をたたかれ下からはPCスキルを指摘される。それにもかかわらず管理職ゆえに部下の育成もしなければ評価されない。そんなストレスフルな姿を見ていれば自ずと「こういう立場に自分をおきたくない」と思うだろう。

最近の管理職の方を見ているとひたすら何かに耐えている人が少なくない。上司からの叱責も部下からの批判にしても「自分が耐えれば」「この場を超えれば」ということでひたすら黙して時間が過ぎるのを待つ。管理職としては、自分の意見を述べて「それがパワハラだ」と批判されることを過度に恐れている。こういうった「耐えている姿」は、ときに部下の育成を阻害する。なにより自分の精神衛生上もいいものではない。忍耐というと響きはいいがときに問題の先送りというだけの場合もある。

やはり部下からの問題行為に対してしかるべき指摘をするべきだ。そこをコトナカレで目をつぶっていると組織としての規律が取れなくなる。なにより違法な行為がまかり通ってしまう。もちろん暴力や人格批判のようなことをしてはならない。でも会社の方針に合致しないことなどを部下がしているのであれば「それは違う」というのも優しさだ。「これを言うと嫌われるのではないか」という悩みは誰しも抱くもの。その悩みの次にどう動くかで部下の育成も違ってくる。「嫌われるからやめておこう」では部下はせっかくの機会を失う。「それでもいわないと」というのが部下を伸ばす。その場では理解してもらえなくてもいつか花開くと信じるしかない。

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