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労災事故対応

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勤務中に交通事故。被害者にも過失があれば労災保険を利用したほうがいい

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2020.02.23

勤務中に交通事故に巻き込まれてしまうことはあります。このとき「どうしたらいいのだろう」と考えるのが労災保険の適用です。一般的な事故であれば労災保険を利用することでいいのですが自動車の場合には自動車保険もあります。労災保険と自動車保険のいずれを利用するべきなのかは相談として少なくあります。ここでは労災保険の適用を考えるべき場合について整理しておきましょう。

そもそも労災申請は「本人」がするものです

勤務中に事故で負傷すれば、労災事故にあたります。自動車事故の場合でも同じです。

労災事故の場合には、労災保険の申請をすることができます。このとき「会社で労災保険の請求をします」という説明をする人もいますが正確ではないので気をつけましょう。労災保険の請求をするのは、あくまで被害にあった「本人」です。会社は、あくまで手続きをサポートなり代行する立場です。ですから請求するかどうかは、会社の意向は関係なく被害者が自分で決めることになります。

会社が「労災として認めない。印鑑も押さない」といっても大丈夫です。なくても自分で申請することは可能です。ただ会社とギクシャクしたくないでしょうから事前に話し合って労災保険の申請をするときには会社に協力してもらうようにするべきです。

ちなみに会社は、社員が労災保険の請求するかどうか関係なく社員が休業するような場合には労働者死傷病報告を提出しなければなりません。これは保険請求と関係ないので注意してください。

このように交通事故の場合には、①自動車保険を利用する②労災保険を利用するというふたつのケースがあり被害者にて選択することができます。

もっとも被害者は、自動車保険と労災保険から二重に受け取ることができるわけではありません。そこは二重にならないように調整を受けます。あたりまえですが。

被害者にも過失があるような場合には労災保険の請求を検討しよう

「労災保険の請求だと被害者の受け取る金額が少なくなる」と間違った認識の人がたまにいます。通常そういったことはありません。もしそうであれば誰も自動車事故で労災保険請求なんてしないでしょう。

難しいことは省きますが被害者自身にも過失がある場合には労災保険を利用したほうが被害者の方が最終的に受け取る金額が大きくなりやすいです。肝心な部分を端折って申し訳ないですがざっくりいうとそんな感じです。

例えば治療費100万円で慰謝料100万円の事案があったとしましょう。ものすごく雑なものですが。このとき加害者の過失割合が6割、被害者の過失割合が4割としましょう。

【労災保険を利用しない場合】
労災保険を利用しない場合には、被害者は加害者に対して(治療費100万円+慰謝料100万円)×6割=120万円を請求できます。被害者は、回収した120万円から治療費100万円を病院に支払います。そのため手元に残るのは20万円になります。

【労災保険を利用する場合】
労災保険を利用する場合に、治療費を被害者が負担することはないです。そのため被害者は加害者に対して慰謝料100万円×6割=60万円を請求できます。被害者の手元に残るのは60万円になります。

これはものすごくシンプルに書いていますがイメージはできるでしょう。労災保険を利用すれば、医療機関の窓口負担がないところがポイントになります。最終的な手元の金額を考えれば被害者にも過失があるようであれば労災保険を利用したほうが有利なことが多いです。

労災保険を利用すれば、「休業補償給付では給付基礎日額の4割しかでない」という質問をされるときがあります。ですが差額4割については別途加害者に請求することができますので特段不利益になるわけではありません。

被害者の方の心情としては、手続きがどうであれば事故による損害について適正に回復して欲しいというのが素直な意見でしょう。労災保険を利用するべきかどうかは考えるとなかなか難しいときもあります。しかも実際に手続きを自分でするとなると保険会社との交渉などもあり煩瑣です。いちど弁護士に相談されることをお勧めします。

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