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解雇・退職

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採用内定。でもコロナで採用が難しくなってしまい

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2020.06.22

労働人口の減少で中小企業を中心に採用難が続いている。「どこかにいい人いない」という声を聞くことも多かった。まさに応募してくれるだけでもありがたいというのが担当者の声だった。これがコロナショックで一気に変わった。有効求人倍率はいきなり低下。多くの企業が「新規採用よりも既存の社員の暮らしをまず確保しなければ」ということで採用自体を停止するケースも少なくない。とくにコロナは、いつ収束するかの見定めがつかない。売上の回復の見込みが立たないため人件費の拡大になる採用にはどうしても消極的になってしまうだろう。

困ったのは経営者ばかりではない。「これから新天地で頑張ろう」という雇用される側も同じだ。せっかく仕事が決まったのに職場にいまだ行けていないという話しも珍しくない。「とりあえずテレワークで会社の雰囲気をつかんで」といわれてもどういうメンバーがいるのかすら不明の状況では雲をつかむような話になってしまうだろう。

こういった状況下で経営者として悩むのは内定をだした方への対応だ。「この時代にやって申し込んでくれた」と喜んでいたらコロナで売上激減。やむをえずに内定取り消しを選択肢として検討している人もいるかもしれない。そこで内定取り消しというものをもう少し法的な側面から整理してみよう。

内定というのは契約が成立している?

一般の方からすれば、内定という言葉からイメージするのは入社候補生というものかもしれない。これを法律的な側面から見れば、そもそも契約が成立しているのかということになる。契約が成立していればかってに「それではなかったこと」ということにはならない。そんなことが許されたら世の中は猜疑心にあふれてしまう。

そもそも社員として働くということは、会社と社員が労働契約を締結しているということだ。社員は労働力を提供し会社は賃金を支払う。これが労働契約の基本となる。では内定の場合はどうか。判例では、労働者を保護するために内定についても労働契約を締結したことになっている。具体的には応募・試験が労働者からの申し込みになる。これに対して内定通知の発信が契約の承諾になる。内定通知をだせば契約を締結したことになる。別に労働契約書がなくても当然に成立したことになる。

もっとも内定に関して成立する契約は、始期付解約権留保付労働契約といわれる。なんとも長い命名であるが簡単にいえば①内定通知書などに記載のある採用内定取消事由があれば解約できるしかつ②卒業できなかった場合も解約できるというものだ。あたりまえに聞こえるかもしれないが法律的に表現するとこうなる。労働法制は基本的には労働者保護の要請が強いが内定に関しては流動的なところも考慮して若干通常の労働契約に比較して会社の裁量を広くしているところがある。

コロナの影響で採用内定取消は可能?

さりとて雇用される側にとっては、「内定取消事由にあたるから今回は取り消します」というのでは生活も不安定になって困惑するだろう。正式に働きだしたら労働法制で保護されるのに「内定段階だから」というのはなっとくできないだろう。そのため判例においても内定取消といえども客観的に合理的で社会通念上相当と是認できるだけの根拠は必要とされる。イメージとしては、「それは仕方ない会社の判断ですよね」とみんなが共感できるだけの理由が必要ということだ。

ではコロナショックによる不況ではどうか。これについても労働者保護の要請は当然にある。そのため内定取消についても整理解雇に準じた厳格な理由が必要とされている。具体的には①取消の必要性があること②取消の回避義務を果たしていること③人選が適切になされていること④十分な説明がなされていることなどが必要ということだ。経営者は「コロナで先が見えないのでわかってくれ」というだけではまったくもって不十分ということだ。現実的にはいくらかの解決金を支払って円満に解消することもある。

こういった内定取消の慰謝料としては100万円が認定されたケースもある。あるいは別会社に就職するまでの給与相当額が損害として認定されたケースもある。いずれにしても内定取消によって会社として経済的負担を強いられることがあることは覚悟しておくべきであろう。

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