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後継者・幹部育成

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コロナをきっかけに賃金見直し。「昇進」と「昇格」の違いを説明できますか

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2020.06.24

コロナによる売上減少によって企業として人員の見直しも余儀なくされている。これをきかっけに人事評価や賃金テーブルを見直したいから社労士の方を紹介して欲しいという声が続いている。賃金を見直すのはいいが簡単なことではない。「景気の先行きがわからないからひとつよろしく」では何も決まらない。とくに人事においては似たような言葉多くて「なんとなく」わかったつもりでいることが多い。例えば「昇進と昇格」似たような響きだが内容として違う。まずは言葉の整理から始めていこう。

昇進とは職位・地位に関するもの

昇進というのは企業における職務における地位の上昇を意味する。課長から部長になれば昇進したということになる。昇進祝いは誰にとってもうれしいものだろう。最も最近では管理職がめんどくさくてあえて昇進を拒否する事例もあるようだが。昇進の反対は降格。部長から成績不良で課長になれば降格ということになる。こういった昇進や降格は、職位=企業における権原の範囲を示すことになってくる。昇進のイメージは誰しも描きやすいだろう。

問題は似て非なるものとしての昇格。昇格を理解するためには、企業で広く人事評価として利用される職能資格制度を確認しておく必要がある。職能資格制度とは、企業における職務遂行能力をざっくりわけて(事務職・営業職など)、各分野の遂行能力を資格と等級にて整理したものである。資格のなかをさらに細分化して等級が設定されることになる。職位が個人の権限の範囲であれば職能資格は、個人のスキルといったらわかりやすいかもしれない。昇格というのは、こういった資格があがることをいう。また昇給は、資格の構成要素である等級があがることをいう。

昇進も昇格もベクトルは上に向かうものである。これに対するものが降格になる。降格には、①職位を引き下げるもの(昇進に対応)と②資格や等級を引き下げるもの(昇格・昇給に対応)がある。

賃金を減額することは容易ではない

日本の賃金制度は、基本的に年齢給(勤務年数によるもの)と職能給(個人のスキルによるもの)を複合的にしたものが多い。これは年功序列と終身雇用をベースにした日本独自の賃金体系と言えるだろう。もっとも最近では成果主義的要素を膨らませた賃金テーブルも作成されているが中小企業において成果主義的な運用ははっきりいって簡単ではない。

個人の賃金は、労働法によって厳格に保護されている。企業が「経営が悪化したから」という曖昧なことだけで減らすことができるわけではない。ここでは賃金について抑えておくべきことを整理する。

まず減給について。誤解している人が多いが経営悪化を理由に減給をできるわけではない。減給というのは、あくまで懲罰権の行使のひとつである。対象となる社員に具体的な問題行為がなければならない。しかも減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならないとされている。つまり会社の都合で自由に減額できるわけではない。

次に降格。降格処分には、①懲戒権として行使される場合と②人事裁量として行使される場合がある。人事裁量として行使される場合としては、成績不良などを理由にして部長から課長へと格下げをされるような場合である。こういった降格による賃金の引き下げ(手当の抹消など)は、賃金規程の基準に基づいて実施する。なお実務では降格処分自体が根拠のないものとして争われることもある。

こういった降格処分ではなく単純に「現在の経営状況では従来の賃金の支払いを維持するのが難しい」という場合もある。こういう場合には、個別に削減について社員の同意をもらうほかないであろう。一方的に減額すればあたりまえだが感情的な対立になってしまう。

こういった人件費に関わることは最初の扱いでミスをすると問題がこじれてしまう。はじめるまえに専門家の意見を聞くべきだ。

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