後継者・幹部育成
テーマは事業承継。されど描きたかったのは、それではない
弁護士:島田 直行 投稿日:2021.04.13
新著「社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます」(プレジデント社)の発売日が近づいてきました。案内させていただいた方からは、「楽しみにしているよ」など言っていただくことがあります。言っていただけるとうれしいものです。今回のテーマは、タイトルにもあるようにファミリービジネスにおける事業承継です。ご存じのように後継者不足は、日本社会の大きな課題のひとつになっています。山口県の場合には、後継者不在が全国ワースト3位とまで言われている状況です。「なんともはや」という印象をぬぐいされません。この数年で事業承継の問題に対応することがずいぶんと増えた印象があります。先代が70代前半で社長の椅子を渡すケースが多いようです。
このように事業承継は、経営者にとって喫緊の課題になっています。そのため事業承継の本あるいはセミナーなどは盛況を帯びています。M&A会社のCMを目にすることも増えてきました。そんななかであえて事業承継の本を出版したにはきちんとした意図があります。「なぜこの本なのか」について自分なりの意図をお伝えしておきます。
同族企業の経営者は、会社と家族の双方を背負う。だから事業承継も両にらみで
ファミリービジネスでは会社と家族が一体化しています。会社と家族は相互に影響をしあうことで有機的に成長していきます。そのため事業承継を「会社のこと」と単純に割り切ってしまうとうまくいきません。事業を承継させるためには、会社と家族を包括的にとらえたうえでの施策をとらざるを得ないわけです。それにもかかわらずこれまでの事業承継は、そういった包括的な視点が必ずしも十分ではありませんでした。「自社株をいかにして譲渡するか」「会社の財務をどうするか」「節税をいかに実現するか」など会社の事業ばかり注目されてきたといえるでしょう。それは大事なことではありますが事業承継のすべてではありません。
事業承継の対策を打っても「本当にこれでいいのか」となんとなく違和感を覚える経営者は少なくありません。その違和感の根源的な理由は、家族についてのフォローが不十分なところにあります。会社の仕組みはなんとか整理できても自分を支えてきた家族についてのフォローができていないということです。例えばとかく後継者ばかりが注目されますが後継者にはなれなかった家族もいるわけです。そういう人のことについて事業承継の本で触れられることはあまりありません。ですが実際には家族における不公平感をなくすためには大事な視点です。そこが抜けているからこそ家族の軋轢もうまれてきます。
そのため今回の本のなかでは会社と家族という両側面から事業承継について整理するようにしました。
事業承継は経営者のライフプランに引っ張られる
次に事業承継は、経営者のライフプランをベースに時系列で整理するとわかりやすいです。とかく事業承継は、自社株対策、相続対策と言ったように点として捉えられてしまうがゆえに手落ちがでてしまいます。事業とは経営者の人生そのものです。そして人生はひとつの点ではなくひとつの点の集積としての線として成立しています。人生においてはいろんなことがあります。例えばいつか自分が介護を要する状況になることも当然予想されます。すると自社株を保有したままで判断能力を喪失することになりかねません。そういうときに「どうやって株主総会を開催するのか」「連帯保証人を拒否されたらどうするのか」などを考えている人があまりにも少ないわけです。これでは事業が成り立たないですし従業員に対してもあまりにも無責任です。
こういった個人の問題は指摘されないと自分の課題として浮き彫りになってきません。事業承継の失敗といっても実際には個人の問題が原因になっていることも多々あります。相続における家族観の確執なんてさいたるものでしょう。事業承継について経営者個人のライフプランから離れて抽象的にコストだけで考えていたらたいていうまくいきません。なぜなら経営者を離れた事業なんてあり得ないからです。
そこで本書においても経営者個人のライフプランをベースに事業展開の各手法を整理しています。
M&Aのリアルな雰囲気を伝えたい
本書では事務所で関与する事業承継型M&Aについてページを割いています。これからの時代には後継者不在のなかで事業承継を目的としたM&Aがさらに増えてくることが予想されます。自社の行く末としてM&Aに興味を持っている経営者は少なくありません。ですがM&Aはたいてい秘密裏に実行されるためになにがどうなっているのか周囲にはなかなかイメージしにくいところがあります。「どうやって買い手を探すのか」「誰に最初に相談するべきか」「費用はどのくらいかかるのか」「売却価格はどう決まるのか」など疑問点はわいてきても明確な回答を手にしにくいものです。わからないからこそさらに悩んで周囲に流されてしまうこともあります。それはあまりにも残念なことです。
というわけで本書では、「M&Aはこんな感じで展開する」というのを赤裸々に書いてみました。細かい法律論ではなくて「こうやって双方合意するのだ」というところです。同時に「たいていこんなところでつまづく」というのも載せています。一読すればM&Aへのマインドセットができるはずです。
ぜひご興味があればお手にとられてください!また感想もいただけると幸いです!!
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