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リスクゼロ幻想。医療機関にせまるクレーマーの特徴とは

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.05.18

医療機関からは、クレーマー対応について事務所に相談を受けることがあります。コロナワクチン接種についても悪質なクレームで現場が疲弊しているという話を耳にしました。一般的なクレーマーの特徴などについては、「社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています」に整理していますが医療機関には独自の特徴があります。いわばクレーマーが発生しやすい理由のようなものです。こういった根本的な部分を押さえることなく表面的な対策をいくらとっても問題の解決になりません。そこで今回は医療機関におけるクレーマーの特徴について「院長、クレーマー&問題職員で悩んでいませんか? 」の記載内容をベースに整理しておきましょう。

いつの間にか広がってしまったリスクゼロ幻想というリスク

私たちは、日頃の仕事のなかで「いかにリスクを低減させるか」について考えるようにしています。リスクというのは悪であり排斥してこそ意味があるという前提に立っています。リスクを低減させるために核技術も発展してきたという側面があります。これは医療分野においても打倒します。医療があまりにも急激に発展したことによって「医療=リスクゼロ」と誤解が広がるようになってしまいました。あたりまえのことですがあらゆる事象においてリスクをゼロにするということは不可能を強いることです。仮にリスクがゼロとなれば、そこにはなにかいびつなものがあるはずです。これは医療においても打倒します。医師らは、リスクを低減させるために日々努力されているはずです。ですがいかに努力をしたとしても神ではないのですから限界というものがあります。医療におけるリスクをゼロにするということはできないはずです。

それにもかかわらず医療≒リスクゼロという認識に立ってしまうとなんらかのリスクが顕在化したときに過失の有無に関係なく責任を追及されてしまうことになります。これでは医師としてもあまりにも過大な責任を強いられることになり耐えられないでしょう。それはひるがえって社会全体における医療の発展を阻害することになりかねません。クレーマーにとっては、そういった医師らの立場について理解を示すことなくわずかな問題を見いだして話を拡大してくることがあります。「自分の想定とわずかでも違ったら許せない」という価値観が根底にあるのかもしれません。今一度立ち止まってリスクゼロ幻想から覚醒するべきです。

なぜか本人ではないものがクレーマーとして詰め寄ってくる

被害にあった当事者などが正当な批判(クレーム)を述べることは、サービスなどの品質を向上するうえでも必要なことです。医療機関としても「然るべきクレームを然るべき方法で」告げられたら真摯に対応しているはずです。対応に苦慮するのは、大声をだすあるいは一方的に面談を要求するなどのあきらかに相当性を逸脱した対応をされるときです。しかも医療機関の場合には、当事者である患者ではなく家族をはじめとした第三者が「代理人」という名目でクレーマーとしてあらわれることが珍しくありません。医師としても「患者の家族だから」といって真摯に対応するものの相手から言われなき批判を一方的に受けることもあります。「なぜ家族にそこまで言われる必要があるのか」と内心では憤りを感じつつも医師という立場からひたすら耐えるという経験は誰しもあるのではないでしょうか。

あたりまえですが家族だからといって当然になにかを要求できる立場にあるわけではありません。ある事案では患者の家族と名乗る者から苛烈な批判がありましたが本人に聞くとまったく気にしておられませんでした。クレーマーがくると医師らとしても緊張して「ことなかれ」で場当たり的な対応をしてしまいがちです。ですがこういった対応を初動でしてしまったがゆえにずるずると相手のペースに引っ張られる可能性も高くなります。「あなたは当事者ではないですから」とはっきり拒否するスタンスも円滑なクリニック経営に必要なことです。

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