
「ヒヤヒヤする職場に未来はない」
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.03.26
下関商工会議所にて「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」をテーマにセミナーを開催させていただきました。4月からは東京都でも「カスハラ防止条例」が施行される予定であり、今後は政府としても、企業に対してより積極的に対策を求めていく流れになると考えられます。
企業にとって、カスハラの問題を放置すること自体が大きなリスクとなりうる——そのような問題意識のもと、今回のセミナーでは注意喚起も兼ねてお話をさせていただきました。
まず、カスハラによる被害について、企業経営の観点から整理してみました。私たちはつい、カスハラを「加害者と被害者」という個人間のトラブルとして捉えがちです。もちろん、不当な要求や言動により特定の従業員が深刻な被害を受けるというケースは少なくありません。だからこそ、企業が従業員を守ることは当然の責務と言えるでしょう。
しかし、問題はそれだけにとどまりません。現代のカスハラ被害は、個人だけの問題ではなく、組織全体に影響を及ぼすものとなっています。
たとえば、カスハラにあった従業員が離職を選択するケース。今は売り手市場の時代です。誰も、つらい思いをしてまでその企業にとどまる必要など感じません。結果として企業は人員の確保が困難になり、経営そのものの存続すら危ぶまれる事態にもなりかねません。
さらに、カスハラ対策が不十分であったことが理由で退職者が出れば、その評判はあっという間に広まり、新たな人材が集まらなくなります。人手不足が原因で倒産するケースも、最近では決して珍しい話ではありません。
ですから、カスハラ対策というのは「人の問題」であると同時に「組織の問題」であることを、改めて認識していただきたいのです。これを単なる個人間のトラブルとして片付けてしまう会社には、やがてひずみが生まれてしまいます。
たとえば、離職者が多い会社には、たいてい原因が二つあります。一つはカスハラへの対策ができていないこと。もう一つは、いわゆる「問題社員」への対応が不十分なこと。多くの場合、どちらか、あるいはその両方が当てはまるのではないでしょうか。
人の問題というのは、多くの人が目を背けたくなるものです。揉め事を避けたいあまり、問題を先送りにしてしまう。ですが、それがかえって組織を弱くしてしまうという現実にも、そろそろ向き合うべき時期にきているように思います。
もちろん、賃金や待遇の問題もあるでしょう。しかし、辞める理由が「お金」だけとは限りません。実際、賃金が高くなくても、頑張って会社に残りたいと思っている人はいるものです。最終的に人が働く場所を選ぶとき、いちばん大事なのは「機嫌よく過ごせるかどうか」ではないでしょうか。
どれだけ報酬が良くても、常にピリピリした空気の中で働きたい人など、いませんよね。当たり前のことかもしれませんが、その当たり前をきちんと理解し、対応していく経営者こそが、これからの時代に強く生き残っていける経営者なのだと私は思います。
セミナーは、いつもながら少々脱線もありましたが、現場のリアルを少しでも共有できればという思いでお話ししました。現実は教科書通りにいかないことばかりです。複雑で、ときに非論理的なものをどう受け止めるか。そこに経営の本質があるように感じています。
ご参加いただいた皆さまにとって、少しでもヒントとなる時間になっていれば幸いです。ありがとうございました。
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