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後継者・幹部育成

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「人柄重視で採用」って書くときには立ち止まろう

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2020.10.29

採用とかで「人柄重視で」という言葉を目にしますが「う~ん」と唸ってしまう。採用する側としては、言わんとする気持ちはよくわかる。中小企業の場合には、学歴よりも「きちんと指示に応じてくれる」「指示内容を前向きにこなしてくれる」といった部分が大事になる。こういった情動的な部分がうまくかみあわないと採用する側にしてもストレスになる。だから「人柄」というものを重要視するのだろう。でも冷静になってほしい、人柄ってなんだ。

「私は人柄に自信があります」と申し込んできたらあなたはどう感じだろうか。「そうか。それは求めていた人だよ」と口にでるだろうか。多分でない。むしろ違和感すら覚えるだろう。そもそも「自分は性格がいい」と豪語できる人はなかなか厳しい人かと。そこまでがつがつされるとかえってたじろいでしまうものだ。でも人柄を判断要素として挙げるということは、こういうことを求めているということだ。人柄なんてものは、一定の時間を共有したうえで周囲からの評価によって判明するもの。主観的なものではないだろう。だから人柄という抽象的な言葉で採用を考えるのは避けるべきだ。

日本では、採用において面接が実施される。この面接を重視するのもちょっと問題がある。はっきりいって30分くらいの面談で相手の人柄などわかるはずがない。仮にわかったとすれば「わかったような気になっただけ」というのがおそらく話のおちだ。労働事件においてもよくある。経営者が「面接のときにはいい人だったのに」と口にするのはなんど聞いてきた。落ち着こう。面接のときから問題があれば誰も採用なんてしない。面接は、あくまで面接でありステージのようなものだ。いきなり本音で語り合うということは通常想定できないだろう。お互いそれを前提に面接に来ているわけで。

僕は、面接に対して過度の期待を設定するのに反対。たいていは「会った」ことによる印象によって引っ張られてしまう。普通であれば15分話したくらいで「いい人だ」とは判断しない。でも面接の場合には、そうなってしまう。根底には、人手不足から「採用しなければ」という焦りがあるのだろう。どこかで採用を躊躇する部分があっても出会ったことの印象がすべてを覆い隠してしまうこともある。「会う」というのはそういうことなのだ。例えばビデオ会議をしているとやはり実際に会うのとは違う印象を受けるだろう。ひとつに支店の相違がある。現実に対面すると目船が合うことがある。でもビデオ会議では、画面とカメラの位置が異なるので直接的に目線が合うことはない。だからちょっと冷静な自分がいる。

僕は、面接はある意味で事実関係の確認のプロセスだと考えている。将来の展望とかを聞いてみるのも必要かもしれないが選考という観点からすればいささか疑問が残る。将来のことなんて誰にもわかるわけない。実際に勤務して新しい道が開けて退職していくかもしれない。それが普通。だからいくら「これから」のことを聞いても意味がないだろう。選考という観点からすればやはり実績。その人が何をどうやって達成したのか。そこがやはり見極めの中心になってくる。そこには人柄なんてというものは関係ない。強いて言えば「達成した」という事実のなかに人柄というものが入り込んでくるのだろう。

もっとも「達成」というとなんだか上段に構える人もいる。「そんな実績なんてない」という人もいるはずだ。達成とは小さな成功体験で十分。少なくとも対象者が何をもって「自分なりの成功」ととらえているのかはわかる。大事なのは、自分の言葉で語ることができるかだ。経験したことであればつたない表現でも語れるものがある。これが単に見聞きした内容だけだとなかなか表現できない。

採用時に何を聞くかは会社の在り方を示すもの。ここでひとつ立ち止まって考えるのも大事なのではないだろうか。

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