ハラスメント
「説明を尽くせ」と詰め寄られたとき。そのときの切り替えしで終わり方が違ってくる
弁護士:島田 直行 投稿日:2021.07.01
あきらかな暴言などであれば、こちらとしてもある意味では冷静に対応することができます。必要があれば警察を呼べばいいわけですから。でもクレーマーは、必ずしも暴言であなたを窮地に追い込むものではありません。暴言を吐けば自分の立場がかえって不利になることをわきまえているからでしょう。いっけんすると筋が通るような言葉で煽られると本当に辛いものです。典型的なものが「説明を尽くせ」というものです。この点については「社長、クレーマーから「誠意を見せろ」と電話がきています」の読者からも反響が大きかった部分のひとつです。いかに多くの人が説明責任という言葉で身動きが取れていないか改めて浮き彫りになりました。今回はもう少し踏み込んで「説明責任を尽くせ」と言われたときの対応についてお伝えしておきましょう。
まずおさえるのは説明責任とは法的責任であって根拠が必要ということです
我々は説明責任という言葉をあまりにも濫用しています。どこにいっても「説明責任を」と言われてしまいます。ある意味ではなんとも暮らしにくい社会になったものです。まず「説明をしなければならない」という義務には、道義的な意味での義務と法的な意味での義務があります。両者は似ているようでまったくレベルの違うものです。これを混在させているといつまでたっても相手のペースのままとなってしまいます。実際の暮らしのなかでは相手を批判する道具として安易に説明責任という言葉が利用されているきらいがあります。本人の自発的な意思に関わりなく説明を求めうるのは、あくまで法的なレベルでの説明責任です。そして法的な責任の場合には、根拠が必要となります。そこでクレーマーがむやみに説明責任という言葉を利用するときには次のように回答するといいでしょう。
「あなたがおっしゃる説明責任とは法的責任という趣旨でしょうか。その場合には法的な根拠を明らかにしてください」
こんな言葉を言えば火に油を注ぐだけだという反論もあるかもしれません。ですが相手が感情的な発言をするのであれば警察を呼ぶなどの対応をすればいいだけのことです。どこかで明確に拒否して対立する関係にならなければいつまでもクレーマーの機嫌を取るだけの対応を余儀なくされてしまいます。それは誰にとっても利益になることではないでしょう。ここは意外とポイントなんです。仕事として受任するときも「話を大きくせずうまくやってください」など耳打ちされることがありますが根本的に無理。そんなことができたら誰も苦労はしておりません。その部分の覚悟が定まっていないとたいてい事後的にトラブルになるものです。「不当な要求には断固拒否する」というのは、まさにこういうことを言うわけです。「法的な根拠とかうるさい」など言われれば「それならば対応できません」と断るのみです。
何をどこまで説明するべきなのか明示してもらう
それでも「説明をしないといけない」という場面ももちろんあります。そのとき気をつけるべきなのは「どこまで説明をするか」ということです。私たちは、詳細な説明さえすれば相手は許してくれると考えています。もちろん良識ある人であれば、そういった対応をしてくれるでしょう。ですがクレーマーの場合には、いかに説明をしても「説明が足りない」ということになります。結果として説明責任の無限ループに陥ることになります。こういったことになるのは、説明をする前に何をどこまで説明するべきかの範囲について確定していないからです。
「説明をさせていただく前提として何をどこまで説明するべきか書面でいただきたい」
説明をする場合には、その範囲を必ず事前に共有しておくべきです。これによって「こちらとしては説明するべきことは説明した」と言うことができます。これが事前に説明の範囲が曖昧だと打ち切ることができなくなります。もちろん「そんな説明を聞きたいわけではない。説明責任を尽くせ」とさらに激昂されて反論を浴びるでしょう。そういうときには「こちらとしては事前の取り決めの範囲を示したまでです。御不満があれば司法的手続をとっていただくほかない」と回答することになります。それでいいんです。たったこれだけのことが「なかなかそうは言いにくい」など言われると何もできないと同じです。
「こちらとしては説明するべきことは説明しました。説明内容を受け入れるのはあなたの御判断でありこちらが何か言える立場ではないです」
これも効果的なひと言です。クレーマーに対して「あなたの考えは間違っている」と言っても意味がありません。裁判をするにしてもなににしてもこちらが何か言える立場ではありません。相手が何をしてくるかに思いをはせても意味がありません。どうぞご自由にというのが正しい姿勢です。
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