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ハラスメント

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【社内のハラスメント予防策】社外のリソースを活用しつつ、全体と個人へのアプローチを両輪で

松﨑 舞子 弁護士:松﨑 舞子 投稿日:2023.08.18

事業主へのハラスメント防止措置義務が設けられて以降、事業主の皆様におかれては、社内研修の実施や相談窓口の設置等の対策を講じられているでしょう。ただ、対策を講じたもののハラスメント事案が発生するなどし、対策の効果を実感できていない方もいらっしゃるかもしれません。本ブログでは、社内のハラスメント予防策を検討・再考されるさいにポイントとなる事項をお伝えします。

ハラスメントの発生原因には職場環境も関係している

令和2年度に実施された厚生労働省の委託事業による実態調査によると、現在の職場でパワハラを受けた従業員と、過去3年間に職場でパワハラを経験しなかった従業員とで、職場環境に明確な差異が生じていました。パワハラを受けた従業員が挙げた割合が10%以上、かつ、パワハラを受けた従業員と経験しなかった従業員とで割合が2倍以上開いていた職場環境の特徴は次の内容です。

①上司と部下のコミュニケーションが少ない又はない

②残業が多い、休憩を取りづらい

③ハラスメント防止規定が制定されていない

④失敗が許されない、失敗への許容度が低い

⑤従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的にみられる

①~⑤の中で最も割合が高かったものは①で37.3%でした。

従業員間のコミュニケーションが不十分な場合、他の従業員の業務状況や心理状態が把握できず、受け手からすれば、無理強いされた、不快だ、と感じる言動が生じやすくなります。

②、④の特徴は、会社や部署全体の業務状況が逼迫していることが予想されます。従業員間で助け合ったり、配慮をするという余裕がないことで、他の従業員にきつく当たってしまうような環境といえます。

③の特徴は、ハラスメントが許容されうる環境、あるいは、従業員において何がハラスメント行為かを自覚できない環境となっていることで、ハラスメント事案が生じやすい状況につながります。

⑤の特徴については、従業員間のコミュニケーションはあるのかもしれませんが、互いを思いやる内容になっていないことが問題です。

個々の従業員が研修などでハラスメント予防を意識したとしても、実践ができない職場環境では、研修の効果も現れにくいでしょう。

社内全体、あるいは部署、事業所の職場環境にも視野を広げて、予防策を検討する必要があります。

社内コミュニケーションの改善も含めた多角的な研修、対策を

ハラスメント予防研修というと、法令や政府の指針で示されたハラスメントの定義の確認や事例検討をイメージされるでしょう。啓発という点ではこのような研修も重要です。

他方、職場環境がハラスメントの発生に影響を与えるという点に対しては、社内コミュニケーションについても研修等で改善をしていく必要があります。

社内コミュニケーションに関する研修については、昨今、チームビルディング、チームワーキング等が取り上げられるようになったことで、様々な研修やワークショップの方法が提供されています。会社の現状や規模に合った研修等を実施することで、社内コミュニケーションの改善を図ることも一手です。

従業員間のコミュニケーションという視点では、個々の従業員と話をする機会を設ける方法もあります。定期的な1対1の個人面談がその一例です。

時間を取って話を聞くことで、業務上の悩みの立ち入った話や将来のキャリアなど普段の会話では聞くことができない思いを聞けることがあります。また、個別に時間を取ることで、従業員のメンタルヘルスの問題に気付く機会にもなります。

まずは社内コミュニケーションの現状、特徴を把握したうえで、効果的な研修、対策が何かを検討してみましょう。

管理職向けの対策にも取り組んでみましょう

先程ご紹介した令和2年度の実態調査では、ハラスメント事案が発生している従業員間の関係で最も多いのが「上司と部下」となりました。

上司と部下の関係では、どこまでが指導でどこからがパワハラになるのか、という悩みがよく聞かれます。パワハラと主張されることを懸念して指導が萎縮しないための対策を取れば、管理職や指導者の立場にある従業員も安心して指導、教育を行うことができます。

企業向けの業務研修には、効果的な指導方法に関するもの、感情的なコミュニケーションにならないためのアンガーマネジメントに関するもの、メンタルヘルスに関するもの等、上司と部下のコミュニケーションに特化した研修もあります。

管理職、指導者の立場にある従業員には、一般従業員向けの研修とは別にこのような研修を活用していくことが考えられます。

個人の価値観へのアプローチは啓発と自己点検で

ハラスメント行為の事案を掘り下げていくと、「昔はこうだったから同じようにしただけ」、「業務に取り組む姿勢はかくあるべき」といった個々の従業員の価値観の違いが原因となっていることがあります。このような無意識のハラスメント行為は、研修のみでは予防が難しい部分です。

特にパワハラについては、法令や政府の指針の定義が分かりにくいこともあり、「一般的にパワハラとなる行為」と「従業員においてパワハラと考える行為」のギャップが生じえます。

また、「何がハラスメント行為か」という点は、社会情勢によっても変動していきます。

無意識のハラスメント行為を予防するためには、研修等による啓発活動を定期的に行うほか、各従業員において自己点検を継続する対策が考えられます。

日常的な啓発活動としては、ポスターの掲示、手引きやハンドブックの配布、社外を含めたハラスメント認定事例の定期的な周知といった方法があります。

自己点検の方法としては、厚生労働省等が公表しているチェックシート、あるいは独自に作成したチェックシートを活用するといったものがあります。

実際にハラスメントと認定された他社の事例の共有は、ハラスメントの現状と従業員自身のハラスメントの認識とのギャップを埋める機会にもなります。

他社のハラスメント認定事例については、省庁や各種団体が公表しているもののほか、社会保険労務士や弁護士等への裁判例の調査依頼によって確認することができます。

社長によるメッセージの発信、規則や体制の整備でも基礎固めを

厚生労働省が公表しているハラスメント対策への取り組み事例では、社長名義でハラスメントの予防や根絶に対するメッセージを発信している例がよく見られます。

併せて、ハラスメント防止を規則として制定する取り組みも見られます。

いずれもハラスメント予防の形を整えるという対策にはなりますが、会社を挙げてハラスメント対策をするという姿勢により、従業員に意識の変化や安心感をもたらすことが期待できます。

また、相談窓口に関する工夫がされている例もあります。社内と社外で窓口を複数設ける、コンサルタントやカウンセラーを相談窓口とするといった内容です。従業員が相談を必要とするときには、きちんと聞いてもらえるか、相談によって不利益を受けないかといった不安が生じます。このような不安を解消する工夫があると、相談窓口もより活用されるのではないでしょうか。

ハラスメント対策は、社内での取り組みに加えて社外のリソースも活用することで、より実効性のあるものとなります。

社内全体と個々の従業員それぞれへの多角的なアプローチを意識したハラスメント対策を行うことで、従業員が働きやすい職場環境の醸成にもつながります。

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