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クレーマーの特徴と行動パターン:対応実績の多い弁護士が見たクレーマーの真相

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2019.05.25

クレーマーとはどんな特性を持ち、どんな行動を取るのか。これまで私は弁護士としてさまざまなタイプのクレーマーを相手にしてきました。そのなかで「クレーマーは、とかく自尊心がない人が多い」という印象をもっています。他人に対する過剰要求と自尊心。一見関係のないふたつに実は切れないつながりがあります。この記事ではクレーマーの特性や行動を理解することで現場でクレーマーへの対応を行う人のお役に立てるような情報をご提供します。

クレーマーの特性:クレーマーは「自分の考えがすべて」である。

  クレーマーにとっては、自分の考えがすべてです。物事をすべて「自分」を主体にしてとらえるため自分の考えが実現しないことに耐えられません。みなさんもクレーマーから「なぜ私の言っていることがわからないの。わかるでしょ」と詰め寄られたことがあるかもしれません。クレーマーは、自分が不当な要求をしていると認識していません。自分の言い分は論理的で妥当なものと考えています。ここでのポイントは、すべての基準が「自分としては」とういうことです。判断するときに相手の事情については考慮していません。相手の立場を考えることができないのです。

「自分の考えがすべて」と思っているクレーマーが取る行動パターン

 不当な要求をしているわけではない、と考えているクレーマーがよく取る行動パターンとしては、「電話による執拗なクレーム」です。彼らは不当な要求をしていると自覚していないので、自分の要求が受け入れられないことが信じられずに、しつこく電話を繰り返します。私も無茶な要求をクレーマーから受けてきました。慣れないときには、1時間以上も電話につかまったこともあります。このような電話はいかに切るかが実に難しい。変に切ってしまうとすぐに電話がなされて業務に支障もでてきます。しかも苛烈の要求が連続すると精神的にも滅入ります。

クレーマー対応を生業にしている私ですらこんな経験をして現在に至ります。一般の方がクレーマーにつかまったら離れ方がわからずに大変でしょう。このような電話によるクレームが繰り返される場合にもっともシンプルで効果があるのは、「対応しない」という消極的な方法です。私たちは、とかく問題に対して自ら積極的に動かなければ解決できないと想定しています。そのためクレーマーからの要求に対しても「なんとか対応しなければ」と焦ってかえって問題が複雑になってしまうこともあります。不当な要求に対しては「なにもしない」というがリアルな解決方法として効果的なことが多いです。

クレーマーの特性:クレーマーは、自分が優位でないと落ち着かない

クレーマーは、常に自分が優位でないと落ち着くことができません。これは「顧客」や「取引先」である状態から転じて「クレーマー」になっているケースに多くあります。「顧客」や「取引先」は本来であれば双方にWINがあってこそ良い関係ですが、「顧客」「取引先」であることを「偉い」「優位である」と考えてしまい、それがちょっとした不満やトラブルをきっかけにエスカレートした状態です。

「自分が優位でないと落ち着かない」クレーマーが取る行動パターン

このようなクレーマーは「今すぐ自宅に謝罪に来い」とよく口にします。会社に少しでも非があればどんな些細なことでもあげ足を取って謝罪へと持ち込んでいきます。自分に非があるとなると「謝罪しないといけない」と気持ちになるのは当然でしょう。しかも電話越しに興奮した状態で指摘されると「すぐに対応して火消をしなければ」という思いになるかもしれません。そこでストレスを感じつつも仕方なく予定を変更して訪問するという人もいるでしょう。 

ですがこういうケースで訪問して話がうまくまとまったというのはあまり聞きません。すくなくとも個人的には経験がありません。あわてて訪問しても一方的に罵詈雑言を受けるだけ。「なんでこんなことまで言われなけば」とつらい気持ちになるだけというのが多いのではないでしょう。世の中には、他者に上からものをいって悦に浸る人がいます。相手が黙ってひたすら自分の発言を聞くことに快感を得るのです。このタイプの方は、たいてい社会的にうまくいかないことがあって自尊心が傷ついています。仕事や家族あるいは経済状況において思うようにいかずに現状に不満を抱いています。自尊心がある人は、問題を前にしても自分に自信があるため余裕をもって冷静に対応することができます。自分を理解して自尊心をしっかり持っている人は、誰かと比較して自分の存在意義を見いだそうとはしません。自尊心がない人は、そういった余裕も自信もありません。「自分が劣ってはならない」という劣等感に対する対抗心が先立ちます。誰かに比較して自分が優位にあることを認識しないと不安になります。

 そもそも法的には呼ばれたからといって直ちに自宅に行く義務などありません。真摯に謝罪するために直ちに訪問するというのは道義的にもあるべき姿でしょう。そういった真摯な態度が相手の憤りを緩和することもあるかもしれません。ですがクレーマーとの対応においては、あえて自宅に行く必要はありません。行かなかったから法的に不利になるということも通常想定されません。本当に自分に問題があって謝罪したいのであれば自発的に自宅に訪問などするものです。誰かに強要されてするというものでもないでしょう。相手の意見を聞くのであれば手紙や電話で十分です。見境ない時間に呼び出されて一方的に罵声を浴びて何ひとつ得るものがありません。むしろ相手のペースに飲み込まれてしまいます。

弁護士が考える、クレーマー対応に望む際のスタンス

 クレーマー対応となるとみなさん冷静さを失いがちです。「なんとかしないと」と焦る気持ちが冷静な判断を阻害します。そういう方には、「すぐになんともならないこともありますよ」とアドバイスしましょう。ビジネスではスピード勝負と言われますがクレーマー対応では必ずしもそうとはいえません。時間をかけたがゆえにうまくいったということもあります。

 クレーマーとの交渉においては、双方同じ立場にあります。どちらかが優位というものではありません。相手を交渉の相手として尊重することは大事です。ですが相手を尊重することは、相手の意見を鵜呑みにすることではありません。私たちには、私たちの暮らしがあります。暮らしの平穏が害されるような交渉なんて交渉ではありません。無理な主張に対してははっきり断る。これがクレーマー対応では大事なことです。

 自尊心のないクレーマーは、周囲に対しても強い言葉でプレッシャーをかけようとします。クレーマーは、説明責任、個人情報といった言葉をあげて担当者にプレッシャーをかけようとしするときがあります。

クレーマーの真相と対策のまとめ

弁護士として多くのクレーマーと接した私が感じるクレーマーの共通項は「クレーマーは自分の考えは正しく、優位であることを主張する」ということです。更にこれを感情的に行ってくる場合が多く、多くの方々にとって大変対処が難しい存在となっていると感じています。私が考えるクレーマー対策の要点としては、冷静に、周りの協力を得ながら解決してくということです。責任感の高い人ほど「他人に迷惑をかけてはならない。自分の力でなんとかしなければ」と自分で自分を追い込んでしまいがちです。クレーマーは、そういった個人の責任感を逆手にとって自分の要求をなんとか実現しようとしていきます。そうならないためにも自分ひとりではなく周囲に求めていく姿勢を忘れないでください。

 

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参考記事:「クレーマーは、こういった言葉であなたの思考を停止させる」

参考記事:「クレーマーの心理:自分は被害者であって尊重されるのが当然である」

 

【追加情報】

事務所ではこれまで100名を超える悪質クレーマーの案件を解決してきました。その経験をベースに問題解決の手法を体系化し一冊の本にまとめたものが「社長、クレーマーから『誠意を見せろ』と電話がきています」(プレジデント社)になっています。こちらもご覧ください。

 

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