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クレーマー対応のレベルがあがる会社と変わらない会社の分岐点とは

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.03.19

いかなる分野でも成長する企業と足踏みを余儀なくされている企業があります。これは企業内におけるクレーマー対応においても同じことがいえます。クレーマー対応のレベルが時間とともに上がっている会社もあればいつまでも同じという場合もあります。いずれも最初のころはクレーマー対応に苦慮しているところは同じです。弁護士に相談してやっと解決できたという経験も共通かもしれません。スタート地点はあまり変わらないのにいつのまにか圧倒的な違いになっていることは珍しくありません。わずかな差異が時間とともに大きな違いになるひとつの事例でしょう。自社のレベルがあがらなければ毎回同じことの繰り返しです。そこで今回は「企業を分けるもの」について考えましょう。

経験が経験で終わってしまっている

なにごとも経験しないとわからないものです。しかも経験値が浅いと失敗する可能性も高くなります。これはクレーマー対応にしても同じです。いくら勉強熱心で知識が多くても実際にクレーマーに対峙したときには思うようにいかず失敗するものです。むしろ最初から「失敗は許されない」と緊張するとひどい失敗をするものです。「注意はする。でも失敗を許容する」という緩い心がけが長期的な成長には必要になります。

もっとも失敗をたんなる経験とだけ位置付けるといつまでも成長することになりません。成長には、成功体験ではなく失敗体験の省みというプロセスが求められます。誰しも失敗を振り返るのは気持ちがいいものではありません。辛い経験であるほどに失敗した過去を否定し忘れたいと感じるはずです。ですが現実を見ないとなにもわかりません。企業というのは、それぞれ異なった文化をもっています。「これを導入したら企業が変わる」という普遍的な理論はありません。クレーマー対応にしても外部からの知識で概要は整えられても現場における実際のノウハウに落とし込むのは相当の手間暇を要します。それを忘れて「いくら社員に伝えてもうまくいかない」という愚痴にもなるのでしょう。求められるのは、失敗した経験を抽象化して現場の文化にあわせたノウハウを体系化させることです。この振り返りというプロセスがないがゆえに経験が経験だけで終わっている企業があまりにも多いです。そしてここに成長の分岐点があると考えます。

経験は、あくまで個人のレベルのものであり共有することができません。経験は振り返ることで体系化して智恵になり共有できるものになります。ですから組織としてのレベルを上げるためには経験の体系化をスタッフで実施する必要があります。企業では、この視点が抜けていると言わざるを得ません。

自分事でしか共感には至らない

では具体的な経験の共有について整理しておきます。クレーマー対応の経緯について記録を取っている会社はあるでしょう。「記録を見れば共有できる」というのは物事の本質を理解していません。クレーマー対応というのは、いつ求められるものかわからずかつ売上に直結するものでもありません。重要だが緊急性の低いものであるため目の前のどうでもいいが急ぎごとに注力してしまいいつまでも振り返ることができなくなります。仮に記録があったとして最後に見返したのがいつなのか確認してみてください。そもそも記録を作成したことで満足してしまい事後的に確認したこともないかもしれません。

振り返りは緊急性を見いだせないからこそある意味では強制的に機会を設定することが必要です。例えば半年ごとに振り返る時間を確保するなどのルールです。最初にルールとして決定して時間を確保しなければいつまでも「また次回に」ということになります。仮に決めていても「今回は延期で」ということにすらなりがちです。ここは経営者が「事業経営における重要事項」と宣言して無理矢理でも実施し続ける必要があります。

振り返りのプロセスにおいては、担当者にできるだけ詳細に事実を語ってもらうことがポイントになります。いくら担当者が「大変だった」と伝えても聞いてる側は当事者ではないためイメージがしにくいです。人は自分事でしか共感に至らないものです。その前提で共感してもらうためにはいかに第三者の経験を自分の経験と紐付けてもらえるかがポイントになります。そのために可能な限り事実を詳細に細かく伝えていくべきです。事実を淡々と詳細に伝えることで「自分であれば」というリアリティを導くことができるようになります。

とかく人は、事実よりも感情こそ重要であるように錯覚をしてしまいがちです。自分の感情を伝えれば相手もわかってくれるというのはあまりにも漠然とした期待でしかないです。大半のケースにおいて、そういった期待は裏切られます。むしろ「こんなに必死に伝えているのにわかってくれない。所詮は他人事なんだろう」という間違った印象を発言者に与えてしまいがちです。感情は同情を導いても共感を導きません。むしろ感情が先行して間違った事実を導き出すこともあります。だからこそ事実をありのまま淡々と伝えていく姿勢が求められます。

発言者に対して意見をしない

クレーム対応を総括して話すことは、言葉で表現するほど簡単なことではありません。そもそも嫌な記憶を自分であえて思い出し後悔するのはつらいものです。それをわかって協力してくれるのですから発言者には最大の尊重がなされて然るべきです。

ときどきあるのは発言中に周囲が意見を述べることです。意見を述べることは積極的に議論を展開していくうえでは必要なことです。ですがクレーマー対応の報告においては必ずしも前向きな議論になるとは限りません。むしろ発表者は自分が批判されていると誤解するリスクもあります。このような印象を抱かれると事後的に改善することが難しくなります。ですからとりあえず傾聴するという姿勢を周囲は貫くべきです。たいてい自由に話してもらうと非論理的で理解しにくいところもあります。ですが、それこそがリアリティをもった内容で自分事のように追体験できます。

私たちは、とかく理路整然としたものが真実というか普遍的なものと誤解しています。ですがみなさんもおわかりのように現実社会というのは矛盾であふれていてまったくもって論理的ではないです。運の占める割合も相当高いのが事実です。ですからありのままに話してもらうということはときに支離滅裂なように聞こえるときもあります。このときに「それはおかしい」と否定すれば二度と自由に発言することはできなくなります。それほどセンシティブということです。

こうやって事実を共有することでただちに何か具体的な改善策がでるとは限りません。それでもいいです。なにより「こういう状況もある」ということを認識するだけでも将来の安心感につながります。発言者も自分の言葉で伝えることで辛い経験も克服しやすくなります。吐露するというのは安心にもつながります。こういう機会は、社員に任せていたらいつまでも進みません。まして「そんなことは時間外に」と社長が口にすれば誰も手をつけません。勤務時間中に給与を支払って実施するからこそ意味があります。

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